名古屋モザイク工業×しあげギャラリー座談会【企画・製造編】

 今回はタイル名称統一100周年特別企画。

『名古屋モザイク工業』と『しあげギャラリー』がタイルに携わる者同士、それぞれの立場から語りあうWEB座談会を開催しました。

前半である今回は「タイル企画・製造担当」としてタイルに関わる方々へのインタビューです。ボリュームがありますがとても面白い内容となっておりますので、是非ご覧ください。

では早速、ディープな制作裏話を聞いてみましょう!

【座談会参加者】

Aさん:タイル企画・生産会社社長

(岐阜/笠原で3代にわたって企画・生産に携わる/名古屋モザイク工業主力商品を支える企業でもある)

Bさん:名古屋モザイク工業社内タイル企画・開発担当(一昨年の4月から国産商品開発に携わる/それまで営業職で活躍)

インタビュアー:しあげギャラリーのスタッフさん

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Q1.タイルを企画・デザイン・製造していくとき、どのようにスタート/進行していきますか?

Aさん:まずはアメリカのトレンドを意識!

Bさん:インテリアなら女性目線を重視!

Aさん:デザインの発祥はイタリアだったり、ファッションもスペインやイタリアがデザインのトレンドを作ります。だけどタイル最大輸入国(※1)はアメリカなので、アメリカの動きを注視してます。

アメリカのトレンドを意識し、何が人気になっているのか?というのをSNSなどを使って見ています。それから「こんな形はどうかな?」とかラフにスタートしていく感じです。

Bさん:生産工場から「こんなのどうですか?」という提案、もしくはこちらからお客様や市場の声を反映することが多いです。インテリアなら特に女性の目線を重視してます。

(※1)世界的なタイル傾向として販売量が多い商品が生産継続となるため、日本で人気であっても世界的需要からみて生産中止になる場合も多い。その観点から最大需要国の人気動向は重要なトレンドチェックポイントの1つ。

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Q2.企画製造した中で、一番思い入れのある商品は?

Aさん:テクスチャーと釉薬の作り込みを見てほしい『ミルカ』です

Bさん:とにかく時間がかかった・・・『ミステール』

Aさん:ミルカのテクスチャーは、トートバックの生地を裂いて麻布面をタイルの素地に押し付けて作りました

生地を裂いてそのまま使っているので、実際に反映させると布の縫い目や筋、斑点などがそのままタイル表面に出てしまったり・・・。

何度も布を取り寄せて作り直しがあり大変でした。(※2)でもおかげで輸出先でも大変好評いただいております。

Bさん:ミステールは「色や色幅をこうしたい」など生産工場とやりとりし2年がかりで生産にこぎつけた商品です。

もともとは男性的なイメージで作ったのですが、社内女性の「北欧風」だという意見もあり、そういう風に売り出しました(笑)

2年かかったおかげで思いがけず、今のトレンドであるジャパンディのイメージも合いました。

海外からも声をかけられている商品で、今後ヒット商品になる可能性大です

(※2)実際画像で見ましたが、ブライト釉やカラーバリエーションなど試作品の山でした。


Q3.企画製造した中で、これは「売れる!」と確認したタイルは何ですか?

Aさん:確信はありませんが・・・

Bさん:「売れる」というより「売れてもらわないと(必死)!」

インタビュアー:Aさんが企画生産した『イストワル』は2020年度しあげギャラリー人気タイル投票で1位を獲得したのにですか??

Aさん:ありがとうございます。イストワルは当時サブウェイ系長方形タイルが人気だったので、あまのじゃくな気持ちで正方形がまた復活しないかな?と思ったのが開発のきっかけでした。色々試した結果、形はシンプルでもエッジをだす釉薬を使い、ニュアンスカラーを狙って作った商品です。確信はありませんでしたが、好評いただけたのは本当に嬉しかったです!

イストワル



Bさん:「売れる」より「売れてもらわないと!」という気持ちです。商品が決定すると在庫が入ってきますので、入ってきたからには「売り切るまでは」という気持ちがあります。もちろんタイルを選ぶ自分の感覚も信じてます。

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Q4.タイルを企画製造する中で感じられる苦労・楽しさは?

Aさん:「どうして?」予想外のトラブルが起こっちゃうことも・・・

Bさん:生み出す時の試行錯誤と楽しさは表裏一体

Aさん:タイルに貫入(※3)が入る釉薬は「あえて」その意匠をねらっています。しかしそうでない釉薬を使って作ったのに、採用・製品化してもらった後に名古屋モザイクさんの自社試験の中で貫入が判明して、釉薬を変えて再試験してもらったことがあります。それが判明した時、「なんで!?(泣)」という気持ちでした。楽しさは、SNSを使って様々なところで自分が生み出したタイルが生きているのを見ることができることですね。

Bさん:街中に出かけ、化粧品などのコスメやアパレルなどの売り場で色やパッケージを見たりして、今トレンドはどんなものなのかを考えています。幅広く受け入れられる要素を探しているときはとても楽しいですし、「こんなのタイルにできないかな?」と試行錯誤します。単に化粧品などで人気の色を反映させるだけじゃだめ。それをどんな風にタイルと紐づけるかが重要なんですよね。

(※3)ガラス釉でよく見られる表面が細かく割れたような意匠。経年するとさらに割れが広がる。

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Q5.タイルを製造する際、訴求するターゲット像は明確に想定していますか?

Aさん:インテリアに興味がある人

Bさん:素材として「お好きに料理してください」♪

Aさん:はっきりはないですが、やはりインテリアに興味がある人でしょうか。

Bさん:使う人は想定していませんが、使われる場所を想定することはあります。

インテリアでは「こんな風に料理するとおいしくなりますよ」「好きに料理してくださいね」と料理素材の1つのようなイメージで使ってもらいたいと思っています。

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Q6.失敗談を教えて下さい。

Aさん:たくさんあり過ぎます!とくに、色は良いけど生産したらベースの同じ色にならない。再現性の低いタイルは苦労しました。

Bさん:私もどれを喋ればいいか分からない程いっぱいあります!例えば試作ではOKだったけど一挙に大量に本生産すると「あれ、違くない?」となったことがあります。実際の設備で本生産と同じようにやらないと最終的なタイルの完成形はわからないんですよね(涙)。

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Q7.今後のタイルについてどう考えますか?

タイルの機能性・意匠性の高さをもっと知ってほしい

Bさん:タイルは高い機能性と意匠性があります。正直「こんな優秀な素材がこの金額(で買えるなんて)?」ってことがあまり認知されていない。

また、タイルはもともと土でできてますし、SDGs的素材でもある。セラミックバレー構想(※4)としてメイドインジャパンのタイルだけでなく焼き物全般に対する認知度も世界的に上げていきたいですね。

(※4)タイルに限らない、美濃焼の良さを再認識・ブランド化し世界にアプローチしていく構想。YouTubeも展開している。

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以上、WEB座談会【企画・製造編】でした。

出来るまでの苦労や楽しさ、秘話など忌憚なく語り合い、目から鱗なことばかりでした。

次回は輸入・買い付け担当の方からのお話しをご紹介します。どうぞお楽しみに!